映画評 『ぬちどぅ魂の声』

 1月22日、三多摩反戦交流会の主催で上映されたこの映画は、3ヵ所における反米軍基地の闘争の記録で構成されている。監督の西山正啓さんは駐韓米軍による猛烈な射爆訓練の被害に苦しむ住民の姿を記録した『梅香里』(メヒャンニ)を2001年に作製しているが、今回は梅香里に加え、沖縄・辺野古、大分・日出生台の闘いが加わって作られている。

 映画は一貫してその地で暮らす人々に重点が置かれている。梅香里は自然豊かな、特に豊富な種類の貝に恵まれた地だ。漁師の全晩奎(チョン・マンギュ)さんは淡々と物語る。(牡蠣を集めながら)「別に何もしなくていいんです。このままにしておけば自然に貝が育つ。それをただとればいい。でも、漁は演習がない土日しかできないんです」。また、干潟から少し離れた所に見える島を指差して全さんは言う。「あの島は今よりもっと大きかった。ところが爆撃の目標となってあんなに小さくなってしまいました」。島は多くの海鳥が飛来する美しいものだったらしいが、映像で見る限り荒れ果てた岩山にしか見えない。

 日出生台では牛飼いの衛藤洋次さんが熱く語る。「日出生台は僕の誇りです。大好きな土地です。僕の役目はこの美しい土地を子どもたちに引き渡していくことです。(基地を指さし)あそこを見て下さい。日の丸と星条旗が見えます。あんな旗は日出生台にふさわしくありません!」。海兵隊の演習に対する抗議行動には2004年6月に亡くなった作家の松下竜一さんの姿も連日見られる。「こんなことをして(演習場前に来て抗議行動をすること)意味があるのか、効果があるのかとよく言われます。よく分かりません。でも、演習を支持していると思われるのが嫌なので、私は今日もここに来ました」。運動の原点=自らの信念を言い表していると思う。

 辺野古では緊張が高まる中、連日座り込んでいる地元の人々や支援者との間でユーモラスな交流も。建設を阻止しようとするカが波間を漕いで行くが、小さな二人乗りのカヌーは穏やかな波でも、すぐに波間に消えていく。

 その地で暮らす人々の粘り強い闘いは、基地の多いこの三多摩地域でも大きな教訓を与えてくれる。 inserted by FC2 system